どうも、Castella (カステラ女王様 @Rainha_Castella )です。普段は医師免許持ってることも忘れて、優雅で怠惰な隠居生活しています。
医者90%ほど辞めてる私が言うのもなんですが、勤務医ってキツイじゃないですか。かといって、開業医は起業と同じっていうか起業そのものなので、臨床以外の能力も必要。雇用することで、負うものも増える。隠居した身からみると、どっちも大変そう(他人事)。
医者として王道の勤務医や開業医人生に疲れた場合、ドロッポ医(フリーランス医)という生き方もあるわけで、私は過労死するよりは、そっちの方がずっといいと思っています。そりゃ、隠居サイコーだけど、それまでの繋ぎとして。

ドロッポだけなら、誰かに健康上の不利益を与えるわけではないし、後で軌道修正も可能。でも、やらない方がマシな転職すると、「疲れてたから」で済まない悪質な商売に巻き込まれてしまうこともあるので、基礎知識だけは持っておきましょう。
目次でサクッと把握
覚書1:自由診療のがん免疫療法にはエビデンス不足のものも多い
知ってるよって人、多いと思いますが、けっこう引っかかるようです。がんセンターやがん専門病院の医師でも、人生に疲れてそういうとこで、勤務してしまうこともあるとか。1) 私の身近にはいない(と思う)けど、気づかないだけかも。
免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ
免疫チェックポイント阻害剤(分子標的薬って呼んだ方がいいかもですが)「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)が一部のがんに対して保険適用化されています。日本発で世界初の抗PD-1抗体であるオプジーボには超頑張って欲しい! こんなところで私が「著効しろ!」と念を送っても役に立ちませんが、願わずにはいられない。
オプジーボは、免疫療法では例外的にその有効性に関するエビデンスが得られたものです。
でも、がん免疫療法は効果の怪しいものも多すぎる
がん免疫療法と呼ばれているものの問題点は、たくさんありますが、
- がんの免疫療法って、CAR-T療法のように(たぶん)効くのにまだエビデンスが足りてない(ので、保険適用されてないけど治験準備に入っている)ものから、全然効かない(ので、長い間保険適用されていない)ものまで、玉石混交であるという点
- 日本では新薬が承認されにくいというイメージが根強いため、保険適用されないことを新薬承認システムのせいにされてしまう(実際には、2010年以降、治験が通りさえすれば厚労省の新薬承認を速やか)
- 実名でTwitterをしている腫瘍内科の勝俣範之先生によれば、元がんセンター、がん専門病院の医師が、定年後、こうしたクリニックで小遣い稼ぎをしていることがあるらしい。現役がん専門医師が非常勤医師として、アルバイトもやっているとのこと。1)これでは、患者さんどころか、アルバイトしようとする医師も、何を信じたらいいのかわからなくなる
ちなみに、「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)だって、たった418人のデータで承認されています。2) 何千人にもやっても承認されないという治療って、それだけで怪しいと、ドロッポ医な私ですら思う。
ってことで、自由診療でビタミンC大量療法とかの、そんなに高くなくて、そこまで有害でもないものを、「効く」って本気で信じて自分の信念で投与するんならまだしも、むっちゃ高額なエビデンスのないリンパ球療法とかを投与するようなクリニックの雇われ医院長になるのは如何なものかと思うわけですよ。
うっかり怪しげなクリニックの雇われ医院長にならないためのチェックリスト
(1)自由診療で高額医療を行っているところは、とりあえず疑え
日当直なし、手術なし、診療科問わないのに高収入のバイトは、怪しいのでは? と、疑ってかかった方が吉。
なお、ちゃんとした美容外科や美容皮膚科は労働の量の割には高収入ですが、結果が患者さんから見てすぐに分かるために訴訟にもなりやすく、しっかり研修がセット(そして、意外とキツイ)。「先生は座ってればいいから」とか「先生は患者さんの不安を取り除いてあげてください」とかしか言われれないようなクリニックは、かなり怪しいです。
(2)「〇〇免疫クリニック」「〇〇幹細胞クリニック」という名前は、とりあえず疑え
もう、名前からして怪しいですが、ネーミングセンスが悪いだけのこともあるので、仕事内容をよく吟味してください。
(3)「治療が新しすぎてwww承認されない」を力説するところは、とりあえず疑え
治療が新しすぎて、全額が保険適用とならなくても、先進医療の保険診療との併用という制度もあるし、治験もあるわけです。
また、「アメリカではもう認められている!」「日本は遅れている!」等の煽り文句があるにもかかわらず、その治療が「米国国立がん研究所: National Cancer Institute: Comprehensive Cancer Information」のガイドラインに掲載されていないようなら、相当に怪しいです。
例えば、下で勝俣先生が例に挙げてる2つとか、めちゃくちゃ怪しいので、求人を見た瞬間に「うわ、怪しい」と思えるリテラシー必要です。
こんなのもありました。 pic.twitter.com/FaQhs7nXMx
— 勝俣範之 (@Katsumata_Nori) 2018年2月16日
免疫クリニックの求人募集。真面目に勤務医やっても、年収1000万円にもなりません。勤務医療に疲弊した医師がこのような免疫クリニックに雇われてしまうのでしょう。 pic.twitter.com/YG8DaYYwc1
— 勝俣範之 (@Katsumata_Nori) February 16, 2018
覚書2:名前だけ産業医は悪質な企業の片棒を担ぐ危険あり
もう、これ、本当に気をつけてほしい。これは、ガチ産業医よりも、開業医の先生が引っかかりやすいです。

「名前だけ産業医」を依頼するような会社は、1件の例外なく、100%ブラック企業ですから!
「先生来なくていいから」「衛生委員会も出なくていいから」「ハンコだけ押してくれたらそれでいいから」なんていう企業にロクなところないのは、お分かりですよね?
でも、そう言う依頼する経営者/事業主って、大抵、口が上手い、上手すぎる。
「うちは従業員数52人の零細企業で、もう、ホント、これしかお支払いできないんです、これ以上お支払いしたら経営していけません。こんな金額で先生のお時間を頂戴するのは申し訳ないので、お名前だけ頂戴できれば。。。あと、従業員の健康診断はお任せしますんで(←健康診断、従業員の自費だったりする)。」
ちゃんと「だが、断る」って言ってくださいね。
覚書3:当直バイト数回では、常勤医の待遇はわからない
転職などを決める前に、アルバイトがてら、転職先の病院を見ておくのは良い戦略ですが、バイトの待遇のいい病院=正規職員の待遇がいい病院ではありません。もちろん、バイト待遇すら悪いのは論外ですけどね。
同じ条件のバイトの当直には10万円近く払うのに、常勤医には3万円程度しか払わない病院は少なくありません。常勤医に払ってやれよ。。。
また、報酬が同じでも、主治医制をとっている場合は、バイト当直医がその病院で夜中は起こされない代わりに、オンコール待機主治医が遠慮なくガンガン呼び出されていることもあります。
アルバイトで当直だけ行なっている場合、常勤医に会う機会が少ないことも多く、アルバイトだけで、転職候補の病院が全てわかっているつもりにならない方が良いです。

バイトはともかく、転職の場合は、間にエージェント通した方が、トラブル避けやすいです。友人2人とも入職時は当直バイト先の延長ということでエージェント通さずに転職しましたが、退職する時&次の転職探す時にエージェントにお世話になっています。特に、退職の時、エージェントが間に入らなかったら、相当に大変だったはず。
まとめ
うっかり定期のバイトや転職して、不本意な仕事しないための3つの覚書まとめます。
大事なことなので、繰り返して覚えましょう、Répète après moi!(←覚えたてのフランス語使ってみた)
覚書1:「免疫Xがん治療」「幹細胞Xガン治療」の組み合わせは95%怪しい
覚書2:「先生、来なくていいから」な産業医をは100%ブラック企業
覚書3:当直バイト待遇が良くても、70%は常勤医待遇は悪い(この項目だけ%はテキトー)
【参考文献】
1)勝俣範之 トンデモ医療に引っかからないために(下)|Yomi Dr. 2016年8月22日: https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160822-OYTET50024/?catname=column_katsumata-noriyuki
*類似内容のTwitter https://twitter.com/Katsumata_Nori/status/685365033522565120
2)小野薬品工業株式会社,ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社, PD-1 免疫チェックポイント阻害薬として初めて第 3 相臨床試験での全生存期間の改善を示した未治療の進行期悪性黒色腫患者に対してオプジーボ(ニボルマブ)と化学療法を比較する試験結果について 2014年11月19日: https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n14_1119.pdf