カナダの医師国家試験問題:我が子へのワクチン接種を拒否する母親と語れ


どうも、Castella (カステラ女王様 @Rainha_Castella )です。普段は医師免許持ってることも忘れて、優雅で怠惰な隠居生活しています。

もう、15年くらい前になるんだけど、ワタクシ、カナダの医師免許とっちゃおうかなぁ〜と思ったことがありましてね。

結局、英語が苦手すぎて、臨床実地試験 (MCCQE Part 2(OSCE形式))には合格できなかったんだけど。(以下参照)

カナダで医師になれなかった私が、カナダで医師になるまでの流れを雑に解説するよ

2017.11.10

で、その時の問題の一つが、「我が子へのワクチン接種を拒否する母親と語れ」でした。ずっと前のことなのに、印象に残っている試験問題です。

カナダにおけるワクチン行政

カナダではワクチン記録がないと、幼稚園や小学校に入学できない

カナダに母子手帳はないのだけど、その代わりに子供が生まれるとPersonal Immunization Record (ワクチン記録カード)をもらいます。そして、ワクチン記録が適切に埋まってないと、幼稚園や小学校に入学できません。下のがうちの娘のワクチン記録カード(一部)です 。幼稚園や小学校の入学手続きでは、このワクチン記録をコピーしたものを提出します。

また、このワクチンカードの内容は、州ごとに一括で電子管理され、例えば、オンタリオ州では、こちらのページに名前と生年月日を入力すると、今まで受けたワクチンや、これから受けなくてはいけないワクチンの一覧を見ることができます。

さらに、この記録は、市のSchool Board (教育委員会みたいなところ)とも連携しています。入学時にはワクチン記録のコピーの提出しますが、その後のワクチンの追加記録も提出しなくてはなりません。これが適切になされていない場合、School Board から、ワクチンがアップデートされるまで通学停止の措置が取られます。

カナダでワクチンを受けていない子供は高等教育が受けられない

さて、義務教育の間はHome Schooling という選択肢があります。カナダでは高等学校までは義務教育なので(州によって少し違うが、義務教育期間は11〜13年)この期間は、家庭学習することができなくはない。北極圏などにも人が住んでいるため、Home Schoolingは、それなりに確立した制度になってもいます(実際にはSchooling と言って、学校に数日通ったりもしなくてはならないのですが、救済措置はあるようです)。

しかし、それ以上の教育を受けるには、定められた種類のワクチンを定められた回数受けた証明が必要になります。大学に行くのにもワクチン証明が必要で、これがないと高等教育が受けられません(留学もできませんので、カナダに留学したい人は要注意)。

つまり、どんなに勉強が続けたくても、ワクチン証明ができなければ、専門学校にも大学にも通うことはできません。

女王様
カナダの医療(治療)には、イライラすることもあるけど、公衆衛生に関しては、なかなかヨロシイのよ。
にゃんこ
また上から目線にゃ。。。

カナダの医師国家試験:ワクチン拒否の母親と対話せよ

私はカナダで医師免許が取れていないので、実際に診療したことはないし、ワクチンを受け入れない人がどの程度の割合でいるかはわからないのですが、カナダの医師国家試験のうち、臨床実地試験(MCCQE Part2) を受験した際に印象に残った問題というのが、以下。

すごく前なので、細かいところは覚えていないのだけど。

MCCQE Part 2の一部

【状況】2ヶ月健診にやってきた母子。東欧からの新移民である。
母親が、「東欧に住む母親の母(赤ちゃんにとっては祖母)が、「ワクチンすると自閉症になる」と言っている。私もそう思う。子供を守るために、ワクチンはうちたくない」と言っている。

【問1】2ヶ月健診時に必要な予防接種等について全て、母親に説明せよ
【問2】母親と対話せよ

実際の試験では、小さな赤ちゃん(の人形)を抱いた役者さん(お母さん)がいて、私の問いかけなどに対し、あらかじめ決められた返事をします。その様子を採点者が観察して得点をつけていくの。

にゃんこ
対話を!(くくく)

英語で!
英語の苦手な!
空気読むのも苦手な!
女王様が!

対話を!(ぷぷぷ)

女王様
チョー無理でした。ああ、私終わったって思ったもん。
にゃんこ
この設問、ホントに速攻で詰んでたよね。
女王様
悪あがきすればするほどドツボにハマった。。。
いいんだもん。
10年経ったら全ては、美味しいネタなんだもん。。。

めそめそ。。。

にゃんこ
おや、女王様、意外と立ち直れてにゃい?
女王様
美味しいネタとは思うけど、10年以上経った今も、ちょこっと辛い。。。
っていうか、こういうの、日本語でもできる気がしない。。。

この試験、当時、一回受験するのに15万円かかったんですよ。。。今は20万円くらい。
お金をドブに捨てた感半端ない。

加えて言うなら、英語苦手だったけど、この試験に合格できたら、英語の試験は後回しにして、「アルバータ州の大学病院の職業病専門外来で臨床(見学)していいよ」ってとこまでは、なんとか持って行ったんだけどな(持ち前の鈍感力と、空気読まない交渉能力で)。

私にしてはすごく頑張ったと思うので、割と残念。できなかったのは、この設問だけではなかったんだけどさ。

カナダの医師国家試験:ワクチン拒否の母親との対話は、こうすれば合格だったかな(妄想)

この試験に合格することなく今に至るので、妄想に過ぎないのですが、一応書いてみる。

試験中、私がやらかした失敗

  • 生後2ヶ月に何の予防接種するか、そもそも、きちんと覚えてなかった(←言い訳すると日本とはワクチンスケジュールが異なる上、当時日本のポリオワクチンは経口だったから、ものっそい混乱した)
  • 「対話せよ」という設問であって、「説得」せよではなかったのに、説得しようとしてしまった
  • 親に対して、事実(だと私が思うこと)を突き付けて誤解(だと私が思うこと)に対抗して説得する対応は最悪。。。って知ってたのになぁ
  • Andrew Wakefield が自閉症になるって言ったワクチンは、DPT(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)じゃなくて、MMR(麻疹、おたふく風邪、風疹)だし、そもそもAndrew Wakefield 頭おかしい。。。とか、あさって方向に頑張って喋った
  • つか、何を予防接種するのかも覚えてない医者が、ドヤ顔で親に事実(と、思うこと)を突き付けたり、説得しようとしたり、Andrew Wakefield 貶したりするのが色々と最悪
Andrew Wakefield の「MMRが自閉症の原因となる」という論文は2010年には取り消され、現在、彼は医師免許剥奪になっています。が、私がこの試験を受けた時には、まだ論文は取り消されていなかったし、彼の医師免許も剥奪になっていませんでした。

こうすれば良かったかな(過去の自分への助言的妄想)

思えば、当時、Andrew Wakefield のLancet に載った論文は衝撃的で、カナダの医師も「え? まじ? もしかしてワクチンって体に悪かった? そんなはずないよね??? どっち?」って感じだったんですよ。当時のヨーロッパ移民なんて、もっとそう思ってたはず。だから、移民の多いカナダという国で、医師国家試験にこの問いが出されるのは当然。準備しておいて当然。

ちなみに、最近の論文読むと、ワクチン接種に反対する親のうち、医師と会話して意見を変えるのは30-47%1)。つまり53%-70%は、心を尽くして説明しても変わらない。でも、2ヶ月目の健診に子供連れてきてるってことは、子供の健康を願っている親であることは間違いない。今だって、この頻度でしか、親の気は変わらないのだから、当時の思いはもっと強固であったと想像できます。

だから、ワクチンを無理やり接種しようとしたり、説得しようとして不信感を更に深めることをするんじゃなくて、

  • 親にをサポートするつもりがあることを伝え
  • 親に無理強いするつもりはないが、自分の意見としてはワクチンは正義

この2つで良かったと思うわけです(ワクチンスケジュールはさすがにちゃんと覚えた上で)。

もし、それに加えて、

  • WHO2)CDC3)など、カナダの医療施設と全然関係のない、子供を病気にしても全くトクしない機関のウェブサイトの紹介(テロ組織による陰謀説とか信じている親もいるので)
  • 自分が、正しいと思っている根拠を示した論文の紹介

とかできたら完璧だったかな。紹介だけね。

まとめ

今回は、MCCQE Part 2 での設問をご紹介してみました。思えば、カナダの医師国家試験、けっこう面白い質問がたくさんあった(気がする)のに、全部は覚えてないのが残念。

覚えている範囲で、少しずつ書き出していこうと思います。情報が古すぎて、役に立つかどうかは不明だけどね。


【参考文献】
1)Mary C. Politi, Katherine M. Jones,Sydney E. Philpott. The Role of Patient Engagement in Addressing Parents’ Perceptions About Immunizations. JAMA. 2017;318(3):237-238.

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