【医師の当直と長時間労働を考える】その主治医制、チーム制にしませんか?


どうも、ドロッポ医界の女王様、Castella(カステラ女王様 @Rainha_Castella )です。

この記事で言いたいことは一つだけ。「当直やめて夜勤シフト組んだらいいのに」です。

前に書いた類似記事【医師の当直と長時間労働を考える】当直じゃなくて夜勤シフト組んだら? では、(実際は無理と知りつつも)生理的に望ましいシフトのご提案をしてみました。でも、このシフト制をちゃんと活かすには、主治医制やめてチーム制にする必要があります。

注意

この記事は、医師でない人が読んでも、役に立ちません。
真面目に医師やってる人が読んだら、ムカつくだけかもしれません。

女王様
臨床を知らない&日本の医療の現状も知らないのは事実なんで、批判は甘んじて受けますが、意見を変える気はありません。黙ってお聞き。

「主治医制」「チーム制」って?

ここで取り上げる「チーム制」とは、4〜5人の医師グループで40〜50人の患者さんを担当するものです。「主治医制」では、1人の主治医が、10人程度の患者さんを受け持ちます。

*異なる医療職で行う「チーム医療」とは異なる概念です。

カナダの「主治医」

カナダで入院しても、一応、主治医っているのは、いるんですよ、一応ね。主たる治療担当医(a doctor in charge )くらいの意味の主治医はね。私、入院した時、30秒しか会わなかったけど。

私がカナダで入院したのは2泊3日で出産した時だけ(計画(誘発)分娩→帝王切開)。ですから、もしかしたら、内科等の入院では違うのかもしれません

以下、その時の体験。

入院してからお世話になった先生たちは、以下の通り。

  • 入院した日の病棟主治医(産科医B):30秒お世話になった
  • 分娩誘発した医師(産科医C):15分お世話になった
  • 帝王切開を決めた病棟の夜勤医(産科医D):2分お世話になった
  • 硬膜外麻酔かけた医師と(麻酔科医A):20分お世話になった
  • 帝王切開した医師(産科医E,E’,E”):20分お世話になった←出産後日本の出生届にサインしてもらった
  • 退院を決めて抜糸した医師(産科医F):5分お世話になった

これ、日本だったら、全行程、健康診断含め、1〜2人産科医+麻酔科医なんじゃないかしら?

カナダの産婦人科医は10万人あたり5.8人1)、日本の産婦人科医は10万人あたり8.6人(うち72%が分娩を扱う)2)「カナダの産科医が多いから手分けしている」訳ではないんですよ。そういう仕組みなんです。

もしかしたら、産科医だからこうなのであって、内科などでは、事情が異なるのかもしれません。でも、これだけ割り切った割振を見ると、内科入院でも事情はさほど変わらないと想像します(違ってたら教えてください、私、カナダで医者も出産以外の入院もやったことないんで)。

詳細はこちら。

超音波検査は2回。帝王切開でも2泊3日。カナダの妊婦ライフ&出産事情

2018.02.27

なお、入院前は、主治医1=産科医Aに妊婦健診してもらってましたが、入院中、当然、一度も会うことはありませんでした。

カナダの「チーム制」における「今日の担当医」

上述で紹介した記事でもご紹介したように、海外で出産すると、日本提出の出生届(これがないと日本国籍取れない)は、赤ちゃんを取り上げた医師(=今日の担当医)にサインしてもらわねばなりません。海外で生まれた子供の出生届の提出期限は,生まれた日も含めて3ヵ月以内。これ、けっこう大変。

だって、先生たち、本当にコロコロ変わるんです。チーム組んで交代制でやってるので、時間がきたら帰っちゃうもん。それがチーム制だから。

出産のタイミングで帝王切開してくれた医師にサインしてもらわないと、次はいつ、その医師に会えるかわからないから。3ヶ月なんてあっという間にすぎてしまいます。

そう、患者側から見ると、チーム制では、お世話になる医師は常に「今日の担当医」です。

チーム制は、患者側にとって、すごくイイってわけではありません。正直、不便
でも、この方式なら「医者は寝る時間確保できる」。間違いない。

日本の「主治医」

カナダ方式とは異なり、日本での主治医って、「主たる治療担当者」ではなく「受け持ち患者に対して24時間365日待機し責任もつ人」になっています。

特に内科系。外科系と違って手術しないので、一人前(とみなされる)内科系なら、1人で診断して、1人で検査して、1人で治療できてしまいます。で、そのような科では、主治医の「受け持ち患者に対して24時間365日待機し責任もつ人化」が顕著です。内科を例として挙げたけど、小児科(内科系の)もその傾向ありそう。

外科は外科で、若手医師が手術に引き続いて、術後管理を行う病院も少なからずある。当直とは別にね。

主治医制は、患者の治療の責任の明確化と言う点では確かに悪くはないのです。っていうか、患者側からすると、便利だし、顔知っている先生がいつも側にいてくれる。

でも、カナダで患者になって思ったことだけど、便利な医療より、ちゃんと寝てる医師に見てもらえる安全な医療な方がよいです。

日本の「主治医制」にみる「縄張り意識」

患者さんに責任を持つことは、日本においては、縄張意識と表裏一体。それが、自分の首をしめる結果になろうとも。

たとえ同科に複数の医師が存在しても、手助けを求めないだけじゃなくて、下手に触れると(合理的な手助けであったとしても)感謝されるどころか、なんか、ものっそい怒られたりします。

仲悪い先生の下にいる研修医なんて、うっかり自分の指導医以外のアドバイス求めたりしたら、自分の指導医の逆鱗に触れるから!

っていうか、日本の主治医制だと、下図の「I」の先生に負担が集中しますよね。でも、「II、III、IV」の先生も割と休日も病院に顔出すよね。

当時、私は、仕事「しない」じゃなくて、仕事「できない」ため、分類上「III」でした。

で、内心、「せっかく色々な症例があるのに、自分の患者さん以外の経験は蓄積されていかないし、労働は無駄にが多いし、どうしてこんな効率悪いことするんだろう」と思ってました。今は反省してる。。。はずは、ない。

日本にチーム制敷いてるところがあるかどうかは分からないけど

チーム制を敷くというのは、カナダの分娩の際、私が観察したように、当該医師がその時間帯だけの入院患者の診療に従事するということと言い換ええられます。

日本の主治医制でも外見だけ似た仕組みはあって、採血当番とか点滴当番とかオーダーが決まっているけどルーチンワークだけ当番制のものです。チーム制の治療担当医と一見似ていますが、診療方針は、主治医が決めるので、これはチーム制ではありません

チーム制&主治医制のメリットデメリット

チーム制のメリット

チーム制(=ちゃんとシフトを組んで行う夜勤)のメリットは、【医師の当直と長時間労働を考える】当直じゃなくて夜勤シフト組んだら?で書いたように、長時間勤務であっても、夜中に呼び出されないので、休みの時や自宅にいる時は「呼び出されない」という点です。

長時間労働はすぐにはなくならないでしょうが、携帯電話に怯えずに休めるのは大きなメリット。

他には

  • 多くの医師が1人の患者さんに関わるので、間違った治療延々とされることは少なくなる
  • 色々な医師が判断する都合上、カルテ上にきちんと記録が残りやすい(そうしないと次の医師が治療方針の決定できない)
  • 〇〇先生の〇曜日の外来だけ異常に混むなどの非効率が避けられる

などの利点が挙げられます。

チーム制のデメリット

一番大きなデメリットは、患者に対する責任所在が不明瞭になる(かも知れない)点でしょう。

病気によっては、パズルのようにじっくり考えないと、診断すらつかないものがあり、そのような疾病の場合には、「すぐれた医師が」「カンファレンスなどで他の医師の手助けを受けながら」「疾病を探す」方が対応しやすいと考えます。医長とか部長がリーダーシップ発揮すればどうとでもなりそうな気がするんですけどね。

他に考えられるデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • チーム内の最低レベルの医師に、チーム全体のレベルが規定される(「その患者さんよく分からないから別の医師に聞いて」が起こりうる)
  • カルテ書かない医者がいると、情報が共有されない
  • 書類仕事(保険の主治医意見書など)の担当がわかりにくく、気のいい医師の負担になりがち

主治医制のメリット

  • 責任の所在が明らか
  • 「主治医だからなんとかしてください」と言いやすい
  • なんとなく安心感?

安心感あっても、安全じゃないんですけどね。

主治医制のデメリット

  • 同じ人間がずっと判断し続けるので、延々と間違った治療する可能性がある(結構多い)
  • 自分だけが分かればいいと思うので、カルテ記載が雑になりやすい(後から自分で読んでも分からない)
  • 医師の退職/転勤での引き継ぎが物凄く大変
  • 一人の人間に依存するので、主治医がが病気になっても休むのが難しい
  • 主治医に聞かないと分からないので、夜中でも主治医に尋ねる仕組みが固定する

主治医制+当直(という名の夜勤)は最悪コンボ

こんなこと私が言わなくても体感してると思いますが、忙しい科において、医師を追い詰めるのは、主治医制+当直(という名の夜勤)のコンボ

当直(という名の夜勤)は、「単発で行うよりは、1週間単位でまとめて行った方が生理的に負担が少ない」「どうせ長時間労働になるのなら、三交代より二交代の方がマシ」等方法論はありますが、ここではそれは置いて置きます。

主治医制と当直(という名の夜勤)が最悪コンボである9つの理由

  1. 当直は、夜間は眠れること前提で組まれているが、眠れることはほとんどない
  2. 当直は、通常勤務(という名の日勤)から連続で行われる
  3. 当直は、通常賃金の1.25倍どころか、通常賃金の1/3でいいことになっている。
  4. 主治医は、休日でも、主治医という理由で呼ばれる
  5. 主治医が実質オンコール状態であっても、休日は休日なので、給料出ない
  6. 主治医が休日に呼ばれるのは、完璧な指示を出していなかった主治医の自業自得?だからと言う謎理論(完璧な指示などない)
  7. 主治医制だと、たとえ外来や手術が17時まであったとしても、自分の受け持ち患者の指示の締め切り時刻(例えば16時など)は守らなくてはならず、かつ、自分で出さなくてはならない
  8. 主治医制において、指示を時間中に出せないのは主治医の責任
  9. 主治医制の場合、自分の患者さんが落ち着いている日なら休めるというが、受け持っている患者さんが全員落ち着いている日など、永遠に来ない

はっきり言う、25年前から同じだから!

日本の「主治医制」の場合、日勤終わって翌日朝までの当直(という名の夜勤)した後、またそのまま日勤。。。で、やっとお家に帰って眠れる、と思ったら、「主治医だから」という理由で呼ばれ、そんな日の翌日も普通に仕事はあるわけで。。。

こんなの医者だけじゃなくて、その患者さんにとってもイイこと一つもないと、個人的には思うのですが、私が可愛い研修医だった25年以上前から改善する気配なし。全く変わりません。ああ、年がバレるまあいいか。

女王様
25年前から、こんな感じで、今でもこんな感じ。
もう、これって、変える気ないよね。

受け持っている患者さんが全員Stableな日なぞ、永遠に来ない

いつもびっくりするんですが、日本の医師って、そんなギリギリの状況で働いてるのに、「受け持ち患者さんが、こんな状態なのに家にいてもいいんだろうか?」と家でもヒリヒリしてること。かなりクズな医師も内心そう思うのか、責任感の強い別の医師に全部被せたりするのがすごい(責任感強くて怒りん坊じゃない医師が損をしまくるシステム)。

患者さんだって眠りますよね? 医者も寝てください。っていうか、そんなんでくつろげます?

もしかしたら、忘れているかもしれないので、確認しておきますが、受け持ち患者さんが「こんな状態じゃない日」は、永遠にやってきませんよ?

「受け持ち患者さんが全員、落ち着いてる時なら、日曜日は家にいてもいいんじゃない?」と、寝言を言う と、優しい言葉を掛けてくれる人もいるでしょう。が、よく考えてください。

落ち着いてないから入院してるんです。受け持ち患者さんが落ち着いたら退院して、フレッシュな(=落ち着いていない)患者さんが入院してくるだけです。断言しますが、受け持ち患者さんが全員落ち着いている日なんて1日たりともありませんし、そんな日は永遠に来ません。

あとがきに代えて:本当は、医療資源の集約集中も必要とは思うけれど

ここでは、「当直やめて夜勤シフト組んだらいいのに」についてだけを書くと決めたので、それ以外のことはできるだけ提案しませんが、個人的には病院の偏在じゃなくて、医療資源がちゃんと集約集中してないことの方がよほど問題と考えています。

20人の医師でシフト回して200人の入院患者を受け持ちつつ、交代で外来するのはさほど大変ではないけれど、二人の医師で20人の入院患者を受け持ちつつ、交代で外来するとボロボロになります。ま、この件については、気が向いたら、いつかどこかで。

医療資源の集約集中は政治的に偉い人とか、医療界で偉い人にならないと、どうにもなりませんが、今いるスタッフでチーム制にして、当直ではなくて夜勤にすることって、そんなに難しいことなのでしょうか? 長時間労働はなくなりませんが、少なくとも携帯電話にビクビクしないで眠ることができます。眠い状態で判断することも無くなります。

カナダから見る日本の医療は、医師にとって負担が大きく、だからといって患者さんにも良いわけでもなく、現状のままでは立ち行かなくなりそうに見えるのです。さもないと、今いる真面目で良心的な医師は消耗して、いなくなってしまうのではないかと。

女王様
私は隠居してるし、今後私の人生で勤務医する可能性は殆どないので、関係ないけどね。

1)OBSTETRICS/GYNECOLOGY PROFILE|Canadian Medical Association https://www.cma.ca/Assets/assets-library/document/en/advocacy/ObGyn-e.pdf

2)中井章人, 産婦人科医師の地域偏在|第65回日本産婦人科医会記者懇談会(日本記者クラブ)2013年5月8日 http://www.jaog.or.jp/all/document/65_130508.pdf

3 件のコメント

  • 主治医制は未だに多くの病院で採用されていますよね…。

    昼間忙しいのは全然いいのですが、夜はぐっすり寝たい笑

    24時間営業の飲食店も減ってるし、レンタカー屋さんも20時で閉まるところが増えてきたし、これを機に、病院ももっとチーム制が導入されたらいいなと私も思っています。
    徐々に導入されているみたいではありますが。。

    医師じゃなくてもやれる仕事もたくさんあるみたいですね。そういうの、秘書さんに頼めば良いですよね。医者って論理的な思考力に長けているはずなのに、学問から少し離れると途端に論理的じゃなくなるように思います。

    まぁ、文句ばっかり言っても仕方ないので、まずはしっかり実力を付けて、信頼を勝ち取ってから、”これっておかしくね?”と言えるようになりたいです。

    • なすびさん、コメントありがとうございます。

      もう、ホント、おっしゃる通りで
      主治医制、患者さん側から見ると安心なの? 前日寝てないパイロットの操縦する飛行機には乗りたくないのと同じように、前日寝てない医師に診てもらうの不安じゃないかな? と思うし。

      さらに、医師側でも、なぜか主治医制が良いと考える方は多いのも事実。睡眠不足で夜中に呼び出されても間違わずに判断できてるんだろうか? と思うんですよ。

      誰も幸せになってないのに、「安全」ではなく、「安心」のために主治医が無駄に呼び出されてる感があります。

      あと、医師じゃなくてもやれるけど重要で、時間が取られる仕事というと、各種診断書等や意見書の作成があるかと思います。これは医師事務作業補助者に任せちゃえばいいのになーってよく思います。もちろん、最後に医師が目を通す必要はあるでしょうけど。

      文句や愚痴の中には、何か改善のためのヒントが含まれてることも多いので、せっかくだから、書き留めておくといいかも。もし、なすびさんが、ブログ書くのだったら、ネタ帳として使えますw

  • Castellaさん

    返信ありがとうございます。
    “医師事務作業補助者”という言葉、初めて聞きました。そんな便利な人がいるなんて!驚きました。将来の時のために、心に留めておきます笑

    そうですね。文句や愚痴の中にこそ、ヒントがあると思います。ブログか何かでいつか自分の考えや、知識を発信できたらいいなと考えています。なので、これからの病院実習や、研修でもっとこうすればうまくいくのに!と思ったことはメモっておこうと思います笑

    私は、”自分の人生を生きない大人”には絶対になりたくないなぁと思っています。

    医師に限らず、この世の中には、自分の自分の人生を生きていない人(自分を無意識のうちに何かの被害者にしている人)ってたくさんいると思うのです。でも、それって、本当に悲しいと思います。

    ↓こちらにも書かれていますが、私は、今の日本社会の生きづらさの本質の一つがこれではないかと洞察しています。
    https://profile.ne.jp/w/c-149077/

    “我慢”が必要なこともあるけれど、その我慢に甘えてしまうのがよろしくないんですよね、きっと。私もそういう傾向があります。我慢している自分が偉いと思ってしまう。。でも、不必要な我慢はカットして、もっと自由に楽しく生きたいなと思います。

    今は、すごく閉塞感を感じる時代で、私も自分のことで手一杯でこれからやっていけるか??ですが、将来、悩んでいる子ども達に(自分よりも年下の人たちに)、”確かに、生きていれば色々つらいこともたくさんあるけれど、生きることはそんなに悪いことじゃないよ。”とのび太のように言えたらいいなと思います。

    https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=_gD3nPZnKUQ

    長文失礼しました。

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